経理改善お役立ちコラム

経理不正(会計不正)の発生3事例を解説!発生する理由と対策

経理の不正は、業績不振や横領を隠すためなどさまざまな理由から行われます。当然ながら、理由はどうあれ経理不正は許されるものではありません。

経理不正が発覚すれば企業の信頼が大きく失墜したり刑事事件に発展したりする可能性もあり、企業としては不正が起きないよう対策を講じる必要があるでしょう。そこで今回は、経理不正にまつわる実際の事例を紹介するとともに、経理不正が起きる主な理由や企業ができる対策などについてくわしく解説します。

経理不正が発生する理由

経理不正とは、財務諸表を意図的に改ざんすることです。経理不正にはさまざまな種類がありますが、いずれも何らかの不都合な事実を隠すために行われます。経理不正が行われる主な理由は次のとおりです。

  1. 横領などの不正を隠匿するため
  2. 企業の業績不振を隠すため
  3. 脱税をするため

横領などの不正を隠匿するため

経理担当者などが横領などの不正を行い、これを隠す目的で経理不正に手を染める場合があります。

たとえば、経理担当者が会社のお金を500万円着服した場合、経理不正をしなければ会計上の現預金残高と実際の現預金残高が500万円ズレるため、横領はすぐに発覚するでしょう。

これを隠すために、たとえば実際には存在した500万円分の売り上げを計上しなかったり、実際には支払っていない外注費を500万円計上したりといった不正を行い、横領を誤魔化すこととなります。

企業の業績不振を隠すため

企業が業績不振に陥れば、金融機関からの融資が受けづらくなる可能性があります。また、経営陣のほかに株主がいれば、経営陣が株主から責任を追及されるかもしれません。

このような事態を避けるため、実際よりも業績を良く見せる経理不正を行う場合があります。この場合には、経営陣が関与して不正が行われる場合が多いでしょう。

脱税をするため

企業の業績が良ければ、これに連動して法人税などの税金も高くなります。そこで、脱税をするため、実際よりも業績を悪く見せる経理不正を行う場合があります。

こちらも、経営陣が関与して不正が行われることが多いでしょう。

経理不正の代表的な事例と手法

経理不正には、さまざまな手法が存在します。代表的な不正の事例や手法は次のとおりです。

  1. 売上の水増し
  2. 売上の除外
  3. いわゆる「期ずれ」
  4. 循環取引
  5. 押し込み販売

売上の水増し

もっとも単純な経理不正は、売上の水増しです。売上の水増しとは、架空の請求書を偽造するなどして、実際には存在しない売上を計上することです。

この場合には、会計上の現預金残高が実際の現預金残高よりも多くなります。そのため、この差を埋める必要があることから、経営者がプライベートな資金をつぎ込むなどして辻褄を合わせることもあるでしょう。

融資を受ける目的などで、会社の業績を実際よりも良く見せる必要がある場合に行われます。

売上の除外

売上の水増しとは反対に、売上を除外するケースも存在します。たとえば、現金で受領した売上金を計上しないことなどです。

こちらは、経理担当者などが横領を隠すために行うことが多いでしょう。また、脱税が目的である場合も考えられます。

いわゆる「期ずれ」

経費や売上は「いつか計上すれば良い」わけではなく、適切な時期に計上しなければなりません。特に、会計年度をまたいで計上時期がずれた場合には、その年度の利益額や納税額に影響するため問題となります。

このように、本来計上すべき会計年度ではなくその前年度や翌年度に売上や経費を計上する経理不正を「期ずれ」といいます。

たとえば、2023年度の利益額を良く見せたい場合に、本来であれば2023年度に計上すべきであった経費の計上を2024年度にずらしたり、本来であれば2022年度に計上すべきであった売上を2023年度に計上したりすることなどが考えられます。

循環取引

循環取引とは、複数社で共謀して架空の売り上げを計上する行為です。たとえば、A社、B社、C社が共謀して、次の取引を行う場合などがこれに該当します。

  1. A社がB社に、商品Xを1,000万円で販売する
  2. B社がC社に、商品Xを1,100万円で販売する
  3. C社がA社に、商品Xを1,200万円で販売する

このように、最終的には対象となっている「商品X」がA社に戻っている点が循環取引の主な特徴です。実際に商品Xを移動させる場合もあれば、商品XはA社の倉庫に眠ったままである場合もあるでしょう。
循環取引は共謀した企業の業績をそれぞれ実際よりも良く見せる目的で、グループ内の企業で行われることが多いといえます。

押し込み販売

押し込み販売とは、下請け企業などに対して、注文されていない商品や注文数以上の商品を納入する行為です。特定の期に一定の売上目標を達成したい場合に、行われることが多いでしょう。

相手が下請け企業であっても、「お願いして商品を買ってもらう」分には、会計上は問題ありません(相手が立場上断れず無理に押し付けた場合には、下請法など別の問題となる可能性はあります)。一方、会計上問題となる押し込み販売では、裏で謝礼が支払われていたり、翌期に返品できることとされていたりすることが特徴です。

経理不正(会計不正)が起きた実際の事例

経理不正(会計不正)が問題となった実際の事例としては、次のものが挙げられます。

なお、ここで紹介するような大々的に報道される事例は、上場企業など有名企業のものばかりです。しかし、実際には記事にならないだけで、中小企業や零細企業内での経理不正はさらに頻繁に起きているものと推測されます。

事例を参考に、自社で経理不正が起きてしまわないよう改めて注意してください。

株式会社東芝の不正会計

株式会社東芝では2015年、組織的な不正会計が発覚しました。これは、歴代の経営陣が「チャレンジ」と称して売上や利益目標の達成について部下に強いプレッシャーを与えたことで、7年間で計2,200億円余りにのぼる利益のかさ上げが行われた事例です。

この事例では、旧経営陣など5人に対し、総額で3億円余りの賠償を命じる判決が言い渡されています。

参照元:東芝不正会計問題 旧経営陣5人に賠償命じる判決 東京地裁(NHK)

株式会社カネボウ化粧品の粉飾決算

株式会社カネボウ化粧品は粉飾決算が原因で2005年に上場廃止となり、2008年に経営破綻しました。これは、2001年度の債務超過を隠すために経営陣が粉飾決算に手を染め、2,000億円超の粉飾決算が発覚した事例です。

この事例では経営破綻に至ったほか、当時の社長らが証券取引法違反容疑で逮捕され、有罪判決が下っています。

参照元:
カネボウとJAL、今だから知りたい明暗の裏側(東洋経済オンライン)
カネボウ旧経営陣に有罪判決(livedorrNEWS)

振袖レンタル「はれのひ」の融資詐欺

成人式用の振袖レンタル業を営んでいたはれのひ株式会社が、金融機関から融資を受ける目的で約4,800万円の売上高を架空計上した事例です。成人式の直前に店舗を閉鎖したことで、成人式で振袖が切られなかった新成人が続出したことから大きな話題となりました。この事例では、当時の社長が詐欺容疑で逮捕されています。

参照元:「はれのひ」元社長を逮捕 粉飾決算で融資詐欺容疑 成人式晴れ着トラブル(THE SANKEI NEWS)

経理不正をした場合における会社のリスク

企業が経理不正に手を染めてしまった場合、どのようなリスクが生じるのでしょうか?主なリスクは次のとおりです。

  1. 損害賠償請求を受ける
  2. 追徴課税の対象となる
  3. 刑事罰の対象となる
  4. 企業の信頼が失墜する
  5. 業績悪化に気付くのが遅れて倒産する

損害賠償請求を受ける

経理不正が起きた場合には、それにより損害を被った第三者から、経営陣が損害賠償請求をされる可能性があります。損害を被った第三者とは、たとえば企業の株主や、融資を受けた金融機関などです。

経理不正の影響の大きさ次第では、損害賠償請求額が多額となることでしょう。

追徴課税の対象となる

経理不正によって税金が過少に申告されていた場合には、追徴課税の対象となります。

追徴課税とは、税務調査などの結果、追加で課される税金のことです。本来納めるべきであった税額と実際の納付額との差額のほか、次の附帯税が課されます。

  1. 延滞税:利息としての意味合いの税金。
  2. 過少申告加算税または重加算税:ペナルティとしての税金。単なるミスなどの場合には過少申告加算税の対象となり、悪質であると判断された場合にはより重い重加算税の対象となる。

刑事罰の対象となる

経理不正は、刑事罰の対象となる可能性があります。

経理不正がどの罪の対象となるのかは、ケースバイケースです。たとえば、嘘の財務諸表を提出して金融機関から不正に融資を受けた場合には、刑法上の「詐欺罪」が成立する可能性があるでしょう。詐欺罪が成立した場合には、10年以下の懲役の対象となります。

また、取締役などが自分や第三者の利益を図るために経理不正に手を染めて会社に損害を与えた場合には、会社法上の「特別背任罪」に問われる可能性もあります。特別背任罪が成立した場合には、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金の対象となります。

さらに、経理不正の裏に横領などが存在している場合には、横領をした者が「業務上横領罪」などに問われることとなるでしょう。

企業の信頼が失墜する

経理の不正が発覚すれば、企業の信頼が大きく失墜してしまいかねません。信頼が損なわれれば、取引先から取引を打ち切られたり、金融機関から融資を受けられなくなったりする可能性があるでしょう。また、状況によってはSNSなどで「炎上」する場合もあります。

業績悪化に気付くのが遅れて倒産する

経理の不正が起きると、企業の実情が見えづらくなります。そのため、企業の業績悪化や資金繰りの悪化に気づくのが遅れる可能性があるでしょう。

気づいた際には直後に迫った支払い資金が確保できず、手遅れとなってしまうかもしれません。

経理不正を防止するための主な対策

経理不正を防止するため、企業はどのような対策を取れば良いのでしょうか?主な対策は次のとおりです。

  1. 経理の属人化を避ける
  2. コンプライアンス研修を徹底する
  3. 内部統制システムを構築する
  4. 経理機能をアウトソーシングする

経理の属人化を避ける

経理不正は、経理の属人化やブラックボックス化が原因となって起きるケースが少なくありません。

自社の経理を理解している人が社内に一人しかいないということは、仮に経理担当者が不正を働いたとしても、気づくのが難しいということです。そのため、その経理担当者が突然行方をくらませたり横領額がごまかしきれないほど多額となるなど取り返しのつかない状態となったりしてから、初めて経理の不正が発覚する可能性があります。

また、経理担当者にとっても「仮に横領をしても気づかれにくい」という状況では、魔が差してしまう可能性が高くなるでしょう。少額の横領が発覚しなかったという、誤った「成功体験」から横領額が徐々に増えエスカレートするリスクもあります。

このような事態を避けるため、たとえば経理をチーム制として相互にチェックできる体制を整えるなど、経理の属人化やブラックボックス化を避ける対策が必要です。

コンプライアンス研修を徹底する

社内のコンプライアンス研修を徹底することも、経理の不正を避けるために企業が講じるべき対策の一つです。

経理不正は「会社の金を盗んでやろう」という明確な悪意から行われるケースもゼロではないものの、中には「良かれと思って」行ってしまう場合もあります。

たとえば、業績不振でこのままでは金融機関からの融資が受けられないという場合に、会社のためを思うあまり経理担当者が独断で経理不正を行ってしまう場合などが挙げられます。また、「ちょっと借りるだけ。すぐに返せばバレないだろう。」などといった軽い考えから横領に手を染めてしまうケースもあるでしょう。

しかし、当然ながら、どのような理由であっても経理不正はすべきではありません。コンプライアンス研修で経理不正をすべきでないことを改めて伝えるとともに、経理不正の事例や不正を働いた個人が受ける可能性のある罰則などを丁寧に説明することで、抑止力となる効果が期待できるでしょう。

内部統制システムを構築する

内部統制システムを構築することも、経理不正の防止に大きく貢献します。内部統制システムとは、不正経理防止機能をアウトソーシングすることです。

たとえば、先ほど解説した経理のチーム制や相互のチェック体制も、内部統制システムといえるでしょう。また、不正が疑わしい事象が生じた際の内部通報窓口を設け、通報者を守る仕組みを構築することも重要な内部統制システムの一つです。

内部統制システムの構築を自社のみで行うことは、容易ではありません。そのため、内部統制システムを構築する際には社外の専門家のサポートを受けながら行う必要があるでしょう。

経理機能をアウトソーシングする

経理不正を防止するためには経理のチーム制や内部統制システムの構築が望ましいとはいえ、そこまでの人員やコストがかけられない企業も少なくないことでしょう。そのような企業におすすめなのは、経理機能のアウトソーシングです。

経理機能をまるごとプロにアウトソーシングして社内で経理機能を持たなければ、経理の不正を避けることが可能となります。また、経理を担当する自社の従業員に、役員の給与などを知られずに済む点もメリットといえるでしょう。

経理のアウトソーシングには多額の費用がかかるとお考えの方も多いかと思いますが、実際には経理担当者を一人雇用するよりも低いコストで実現できるケースも少なくありません。経理機能のアウトソーシングをご検討の際には、当社TOKYO経理サポートまでお気軽にお問い合わせください。

まとめ

経理の不正は、横領を隠すためや業績を実際によりもよく見せかけるためなど、さまざまな理由から起こります。しかし、経理不正に手を染めれば企業の業績が失墜するなど、取り返しのつかない事態ともなりかねません。企業は、自社で万が一にも経理不正が起きてしまわないよう対策を講じる必要があります。

しかし、経理をチーム制にしたり内部統制システムを構築したりするためにはそれだけの人員を確保しなければならず、ハードルが高いと感じる企業も少なくないかと思います。そこでおすすめなのが経理機能のアウトソーシングです。


そもそも経理機能を自社で持っていなければ、経理の不正は起きようがありません。また、社長の給与や自社の業績など知られたくない情報を経理担当の従業員に知られずに済むなど、ほかにも多数のメリットが存在します。


英和税理士法人が母体となって運営している「TOKYO経理サポート」では、経理機能をまるごとアウトソーシングできる「Smartおまかせ経理」を展開しています。経理のアウトソーシングをご検討の企業様は、TOKYO経理サポートまでお気軽にお問い合わせください。導入に関するご相談やお見積りは無料です。

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