経理改善お役立ちコラム

コントロール不能な経理部長はどうすれば?【事例編】

 中小企業では、部下を持つ経理部長でも経理専業でなく、人材募集から人事総務まで幅広く携わっているのが通例です。このため、月次決算も経理部長次第や、経理部長が幅広い権限や業務担当をしており、社長といえども強く指摘できないケースなどが見受けられます。

月次決算があがってこず、困っている

<販売業X社(社員50人)の社長からのご相談>
 K経理部長(部下2人)は勤続20年。経理業務では、記帳処理、資金繰り、支払業務、給与計算・年末調整業務、社会保険の手続きなどすべて任せて、経理スタッフ2人と共に対応している。
 月次決算が4ヵ月遅れの状況で正しい業績が見えず、資金不足に陥らぬよう資金繰りだけは何とか間に合わせている。販売会社なので、営業社員別の売上は把握できているが、粗利はわからず、販売費および一般管理費を配賦後の(社員ごとの)貢献利益が把握できず、営業へのインセンティブ策なども検討できず、困っている。

 何度も注意してきたせいか、最近退職をほのめかしてきた。社長としては、経理部長が経理以外の業務にも幅広く携わっているようで、どこまで影響があるのかわからず不安。

どんなときも、現状把握から対応方法が見えてくる

現地のヒアリングでみえてきたこと

 当社ではお問い合わせをいただくと、お客様を訪問のうえ、経理の業務内容と状況を詳しく伺います。
 今回は、経理の業務内容や状況について、ご本人と部下の経理スタッフ、他の部長クラスの方にヒアリングしました。
● 記帳処理の状況          課題:業務量と業務の効率化
 毎月、会計ソフトに経理スタッフが入力処理のうえ、K経理部長が処理内容をチェックし、承認して月次決算を完了させる体制でした。
 ところが、記帳処理ボリュームが多く、部門別処理や各種経費の配賦処理、社員の経費精算などもあり、ひんぱんにK経理部長に会計処理の判断を仰がないと入力処理が終わらない状況にありました。
加えて、給与計算や支払業務など遅れが許されない業務から処理するため、タイムリーな月次決算ができていませんでした。
● 給与計算の状況          課題:勤怠管理、経費精算、ペーパーレス化
 タイムカードでの勤怠管理のため、勤怠を毎月エクセルにまとめて集計し、給与ソフトで給与計算を行っていました。タイムカードからの集計では、二重打刻や印字が不明確などで本人やその上司への確認が必要など手間ばかりとのこと。
 社員への給与明細書はA4用紙に4人分ずつレーザープリンターで印刷し、社員ごとに切り離して封筒に入れ、全員に手配りしていました。
 社員やアルバイトの出入りが多く、新入社員や退職者の社会保険関連の手続きと給与ソフトへの情報入力、タイムカードの発行手続きなどが毎月発生し、こうした事務処理に追われている状況が。
● 支払業務の状況          課題:入金口座の分散、支払時期、資金繰り
 毎月の給与送金のほかに、仕入代金や運賃・家賃・車両費など各種経費の支払いが毎月100件程度あり、15日と月末に送金を行っていることも判明しました。
 売上の入金口座が4行に分散している関係で、月2回の支払ごとの総額と資金繰りを考えながら、決済の前日までに(残高不足にならぬよう)支払口座に他口座から資金振替も行っていました。事前に不足が明らかな場合は、K経理部長が銀行に資金調達を依頼する流れでした。

K経理部長はこんなことまでやっていた

 経理部長のKさんは、会社の実印、預金通帳、ネットバンキングの決裁権限と金庫のカギまで握っていて、社長は金庫の合い鍵を持っていても、Kさんに了解をとらない限り、開けて実印などを取り出すことすらできない状況でした。
 また、経理が忙しいという理由で、社長の了解も得ないで経理部門にアルバイトを採用したり、その一方、気に入らなければすぐにクビにするなど、トラブルメーカーでもありました。

 社内全般の業務効率化のための設備機器の選定からリース会社やネットワーク工事の業者選びまで主導権を握ってみずから対応したうえ、販売管理システムまで営業部門との調整をせずに経理部長が決めてしまう有り様。
 また、営業部門の管理職からは月次決算結果が出てこないとか、もっと細かいな数値を要望しても提供してもらえないなどの不満の声もあがっていたものの、意に介さずといった状況に。

あるべき社内体制へのチャレンジ

経理代行+アルファのご提案

 経理業務の現状を整理して、社長には、本来あるべき社内体制に変えるため、経理代行も含めてご提案しました。
● 経理業務への見直し提案
★ 記帳処理の見直し

 TOKYO経理サポートでは、つぎのように提案しました。
・4ヵ月遅れの月次決算       当社による短期集中処理

 当社スタッフ多数が、直前月までの入力処理を同時並行で行い、ダブルチェックも済ませて、短期間で完了させる。
・今後の月次決算          Smart記帳代行の採用

 Smart記帳代行により、お客様との了解に基づいて「年間業務スケジュール」を作成して、資料の期日までの提供を前提に、資料入手後5営業日で月次試算表(●月次財務諸表:B/SとP/L、●総合推移財務諸表、●変動損益計算書、●損益分岐点図表)を提供する。

★ 
給与計算の見直し
 当社では、現状を踏まえてつぎのように提案しました。
・勤怠集計             現状どおり

 勤務形態の特殊性や勤怠システム導入への社内の拒絶感が強かったため、勤怠集計までは従来同様に社内での対応とする。
・給与計算や納税          Smart給与代行の採用

 Smart給与代行により、給与計算処理、社員口座へのネットバンク上の給与データ登録(承認は社長対応)、電子納税(源泉所得税と各市区町村への住民税納付)を代行する。
 給与明細書は紙ベースから、Web配信への切替えを提案。
・社会保険業務           現状どおり

 社員の毎月の入退社のひん度が高いため、社内で社会保険手続き業務は対応されるよう提案。
★ 
支払業務の見直し         Smart支払代行の採用
 仕入代金などの支払については、送金日を月末の一回にまとめても問題ないことがわかったため、Smart支払代行により、ネットバンクでまとめて100件分の取引先の送金データ登録を代行する提案を行いました。当社の代行により、社長はネットバンク上での送金の承認だけしていただけばよいことに。

 上記提案では、当社の代行料は「部長の人件費+法定福利費+福利厚生費」との比較で、大幅にバランスのとれる範囲に収まりました。

● 
社長がK経理部長から引き継べき緊急事項
 退職をほのめかしたK経理部長には、社長から”退職了解”を伝えてもらいました。同時に、当社からは退職にあたり必ず引継ぎが必要な点として、実印、銀行印、ネットバンキングの管理者権限など、業務に必要不可欠なものをもれなく引継ぐよう、ご案内しました。
特に、ネットバンキングの管理者権限は引継ぎが重要であり、Kさんが拒否した場合の対応もアドバイスしています。
管理者権限を放置しておけば「会社の資金を自由に移動させられ、不正の温床になるリスク」があるためです。

● 今後の見直しが不可欠な点の提案

 社員の募集・採用・研修や入社・退社時の手続きなど、バラバラだった人事の窓口の見直し、リース契約やIT工事関連の窓口の見直しなど、会社の内部統制が働くような形での提案をしました。

TOKYO経理サポートへのご相談なら、英和グループの支援も!

 この事例での課題は、経理の問題はもちろんありましたが、社内体制の整備や内部統制上の問題でしたので、英和グループ内のコンサルティング会社にも応援してもらい、良いアドバイスと提案対応をしました。

 結果として、社長を不安がらせたK経理部長には退職の申し出を正式に受理を通知しました。後日談として、ご本人は有給休暇を使い切って、最終勤務日に自分で自分の給与計算をして、その給与を自分で決済・送金して退職していきました。

 最大の心配事だったネットバンキングの管理者権限は、K経理部長により、引き継げないようパソコンから削除されていました。このために、その月の送金業務はすべて銀行窓口での処理となり、当社も巻き込まれて大変な状況に…。
幸いにも資金の使い込みなどはなかったもようでしたが、これに懲りた社長からはすぐに正式な経理代行のご依頼をいただきました。

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